無機質にアウトプット

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【ネタバレあり】映画『ジョーカー』感想

やっと観てきたホアキン・フェニックス版『ジョーカー』。

Joker (Original Soundtrack)

Joker (Original Soundtrack)

 

公開から約1ヵ月経ってもいまだに熱は収まらない本作。

 

この1ヵ月、ネタバレに轢かれないようにネットを闊歩するのが大変でしたよ。

 

観終えて2日経つが、ずっとこの映画のことを考えてしまう。そんな映画だった。

 

「あらすじ」や「DC作品の位置付け」とかは多くのブログやサイトにまとめられているので、初っ端からネタバレありの感想を書いていくので悪しからず。

*この先はネタバレを含むのでまだ観てない方はご注意ください*

本作を一緒に観に行った友人と劇場を出て、最初に言った言葉は「救いのない物語だったなぁ」だ。

 

神経・精神的疾患、寝たきりの母や貧しい生活。彼の取り巻く環境は確かに不遇だった。

 

けれども彼自身元は善良な人間だったとワタシは思う。(善悪なんて主観でしかない、というアーサーのメッセージからすると「善良」と評価すること自体そもそもナンセンスだが)

 

そんな善良だった彼が仕事を追われ、憧れていたコメディアンとしても全くうまくいかず、唯一心の拠り所としていた母も実は自分を愛していなかったというな事実を知り狂気に堕ちていく話は「救いのない物語」だと観賞後すぐは思ったわけだ。

 

ただ鑑賞後色んな方の感想を見ていくと、「なるほどなぁ」と思う感想も多くあり、自分の感想を改めて振り返るようになった。


特に目についたのは、ラストシーンに関する議論。アーサーがアーカム精神病院と思われる病院で女性の精神科医の尋問を受けているところ。

 

「ジョークを思いついた」と大爆笑していた彼は、(おそらく精神科医を殺害し)病院から脱獄を図る。職員から追っかけ回される彼をコメディ調に描写しながら本作はエンディングを迎える。

 

ワタシはこのラストを観た時、正直何も考えず劇中の時間軸どおりのシーンだと思っていた。つまり「マレー・フランクリン殺害後、警察に捕まり精神病棟に放り込まれた彼は最後にまた脱獄した」ことを示唆するシーンだと、なんの疑いもなく観ていた。

 

ただ世の感想を読むと、このシーンは劇中の時間より前のシーンで、アーサーは元々精神病棟に入っており、本編は脱獄(釈放?)されたあとの話では?という説をもつ人が結構多くいた。

 

ほえー。なるほど。確か本編中にはアーサーが精神病棟に隔離されていた時のことを回想するシーンがあったし、そう言われると確かにラストシーンでは髪の色も黒くなってた。

 

もしこの説が正しければ、彼は不遇な環境や数多の不幸な出来事をきっかけに狂っていったわけではなく、元々狂ってたヤツだったってことになる。善良な人なんてとんでもない。

 

ほんとにこのオチだったら、なかなかワタシ好みでグ本作の評価もさらに上がるのだが、そこまでは確証が持てるほどには、この映画は観る者に説明をしてくれていない。

 

しかしワタシはなるほど!と感心したものの、今でもあのラストは時系列通りだと思っている。

 

理由は凶弾に倒れた両親の亡骸の前にたたずむ幼きブールス・ウェインが映るからだ。

 

劇中よりも過去のシーンだとするとあそこで未来の映像が差し込まれるのは、どうしても違和感がある。あとさすがに精神科医を殺しておいて、あんなふうに貧しいながらも普通に生活できるとは思えない。

 

ちなみに彼の考えた大爆笑のジョーク。ワタシは劇場で「コウモリさ!スーパーマウス、スーパーキャット次はスーパーコウモリが街を駆け巡る」みたいなセリフが絶対くる!と思ってた。

 

つまり、自分が作り出した惨劇により両親を失った子供がバットマンというヒーローになるというジョークを考えたんだ、っていうシーンになる!と予想していたけど、全然そんなことはなかった。

 

ただ特に説明はなかったが、あの時アーサーが考えていたジョークは上記に近い内容だったんじゃないかなぁと勝手に思っている。あながち間違ってないんじゃないかと。

 

この辺は同じ解釈をしてる方もいて、嬉しかった。

type-r.hatenablog.com

 

話が逸れたが結局、本作が本当に「救いのない物語」だったかと言われると今は微妙だ。様々なきっかけがあったからこそ、アーサーは狂ったとも取れるし、元々狂っていたとも取れる。

 

アーサー自身が妄想癖があり、いわゆる「信頼できない語り手」であることから、多くの解釈を生み、それゆえに議論も盛り上がっているようだ。

 

【映画パンフレット】ジョーカー JOKER 監督 トッド・フィリップス

 

もう1つ本作に対する感想がある。それは「リアルな怖さ」だ。観ていて普通に怖かった。

 

今までのジョーカーは毒ガス入りの風船をばらまいたり、犯行予告後に病院を爆破したりとやってることは残虐だが、なんとなくポップで現実離れしてた。

 

それゆえにジョーカー自身も現実離れしており、あくまでフィクションの中のキャラクター(ヴィラン)感が強い。

 

しかし今回のジョーカーは違う。持っている武器は拳銃一丁で、その拳銃が火を拭くのタイミンも彼の中で定まっているかも怪しい。

 

ロバート・デニーロ演じるマレー・フランクリンは確かにアーサーをバカにしようとした嫌なやつだったが、殺されるほどだったのだろうかとワタシは思ってしまった。(死ぬだろうなぁとは思ってたけど)

 

マレーを射殺した後も「やってやったぜ(ドキドキ)」感たっぷりで平常心を装うアーサーはとても不安定で、その不安定さがまたリアルで怖かった。

 

ジャック・ニコルソンヒース・レジャーのジョーカーはマネできないけど、本作のジョーカーは現実世界に生きる一般の人でも、マネできそうだなと思ってしまう。

 

日本の映画館で安心して観られたが、とてもじゃないないが銃社会アメリカでは観られない映画だったなと。


さいごに、本作に評価の★マークを何個つけるかは中々悩ましい。2019年を代表する名作であることは間違いないが、観ると中々「持ってかれる」ので何度でも観たいかと言われると、すぐには頷けない。困った。

 

jokigen.hatenablog.com