【書評】『儚い羊たちの祝宴』【ネタバレなし】
なんとか新iPhoneをゲットしたガチ「ネット断ち」状態から解放された。慣れないスマホで久々の記事更新。
ネットに繋がらない時に読み直した米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』の感想を書いていく。
思えば本ブログで小説の記事を書くのは初めてだ。
本の紹介
本書はいわゆる「どんでん返し物」の短編集。
どの作品も高貴な身分のお嬢様、もしくはその家に仕える使用人の視点で書かれており、一般庶民は出てこない。貴族の世界で事件は起こる。
各話に直接的な繋がりはないが、「バベルの会」と呼ばれる大学の読書サークルでゆるやかに世界観は繋がっている。
ミステリーに分類されるものの、派手で凝ったトリックが出てくるわけではない。登場人物も多くないので犯人はだいたい分かってしまう。
ではどこに「どんでん返し物」としてのオチが付くのか?それは犯人の動機や罪を犯したあとの行動や心理描写だ。
これが結構ぶっ飛んでて、金持ちってのはみんな頭おかしいのか?ってくらい狂ってる。そしてそこが本作の見どころであり、面白い。
ハッキリ言って爽やかさとかスッキリさは一切ない。
どちらかと言うとモヤモヤしたり、登場人物の心情に共感できなかったり、読む人によってはひいちゃう人もいるかもしれない。恐さを感じて背中に冷たい汗が流れる人もいるかも。
でも(だからこそ?)面白い。オススメです。短編集ゆえにサクッと読めるので、是非手に取ってみてください。
著者の紹介
著者はアニメ化と実写映画化もされた「古典部シリーズ」で有名な米澤穂信さん。この人の作品はどれも人間の残酷さや黒い部分が織り込まれてる気がする。
青春の代名詞である高校を舞台にした「古典部シリーズ」ですら、例外ではない。
そんな著者が出版社の紹介文を借りれば「暗黒系ミステリ」として、その残酷さ、黒さ、ダークな部分に全力で振り切って書いたが本作なのだから、そりゃ恐ろしいに決まってる。
あとがき
今回6年ぶりくらいの再読だったが、オチを忘れている作品も多く、改めて楽しめた。
ネットの感想を見てみると収録されている『玉野五十鈴の誉れ』が人気のようだが、ワタシは『山荘秘聞』という作品が好み。
主人公の屋島守子がとにかく自分の仕事に誇りを持っているのが良い。
ただこの作品のオチもすっかり忘れてて、最後の1文を読んだ後も完全に勘違いした状態だった。
あとあとネットで調べて、オチ本来の意味を知った。ふと考えると6年前も全く同じ行動パターンを辿った気がする。
まるで成長していない。