無機質にアウトプット

読んだ本や観た映画の感想を書いていきます。

【読書メモ・感想】里中哲彦『日本人のための英語学習法 』

 さて、わたしたちはどうして日本語ができるのでしょうか。日本人だからでしょうか。それとも、日本で生まれ育ったからでしょうか。

 いずれも違います。日本語をみっちり練習したからです。わたしたちは日本語のトレーニングを積んだからこそ、日本語ができるようになったのです。

 ー 里中哲彦『日本人のための英語学習法』より

  昨年2019年、わたしはTOEICスコア600点を目標に掲げ、CMでも有名なスタディサプリで勉強した。結果なんとか630点を獲得、めでたく目標を達成した。 

 

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 600点というのは別に決して高いスコアじゃない。ただ個人的には結構満足し、他にもやりたいことがあるので「英語学習はもうしばらくいいかなっ」ってなっていた。

 しかし先日、会社の面談にて「今後海外案件や留学を目指すのであれば、年度内に650点は最低要件だよ」と言われてしまった。

 

 昔はそこまで海外志向はなかったのだが、最近は短い人生!どうせなら若いうちに!と思うようになり、一応要件だけは満たしておこうということで再度TOEICに向けた勉強を始めることにした。

 

 ということで前置きが長くなったが、そのTOEIC勉強へのモチベーションアップのために読んだのが、里中哲彦氏の『日本人のための英語学習法』。

日本人のための英語学習法 (ちくま新書)

日本人のための英語学習法 (ちくま新書)

 

  ちまたに英語教材が溢れているのと同じくらい、英語学習に関する本も腐るほど出ている。

 

 わたしも英語に関しては一般的なビジネスマンが持つ程度にコンプレックスと課題意識を持っていて、この手の本も何冊か読んでいるのだが、その中でも本書は一番よかった。英語学習本は本書を一冊手元に置いておけば良いと思う。オススメ。 

本の概要

 「シャワーのように聞き流すだけで」とか「ラクして効率よく」とか耳に心地のよい宣伝文句を掲げる英語教材に頼るのではなく、ツールとしての「自前の英語」習得への道のりを導いてくれる。

 

 音読、シャドウイング、多読といった勉強法から英語圏との文化の差、マナー、そしてそもそもの英語学習に対するマインド、目標の重要性まで突っ込んでくれており、本書が示す英語習得への道は間違ってないだろうなぁと納得感とやる気を貰える。そんな一冊。

 

著者の紹介

 著者は河合塾講師、河合文化教育研究所研究員を務める里中哲彦氏。翻訳家もされているらしく、紛れもない英語のエキスパート。

本書を一言でまとめると

 日本人が陥りやすい「ネイティブ英語崇拝」はやめて、日本人の誇りを持った「自前の英語」習得を目指そう。

読書メモ

 以下は引用を交えつつ、気になった箇所をメモ。

 

大切なのは「自前の英語」

 自分自身の見識を語る、中身のある英語。そうした英語のことを私は「自前の英語」(English of my own)と呼んでいますが、同時にそれはまた日本と日本人を語る「自前の英語」(English of our own)でもあるはずです。

 「自前の英語」とは、英語をコミュニケーションのツールとして割り切り、あくまで伝えたい内容と自己本位さを重要視する、英語に対するスタンスのこと。

 

 著者いわく、外国人で英語を話していていちばんおもしろい瞬間は、考え方の差異を感じるとき。

 

 自国の文化や思いをきちんと伝え、さらに相手の文化にも触れ、その上で差やズレを感じながらコミュニケーションを深めていくことに価値があるのであって、英語はその道具に過ぎないということだと理解。

 

「自前の英語3か条」

 有限な時間を英語学習に費やすうえで、軸となる3か条を掲げている。

  1. ネイティブ英語を崇拝しない。
  2. 日本人であることに誇りを持つ。
  3. 英語を極めようとしない。「内容重視」の英語を目指す。 

 

英語習得にかかる時間は基本レベルでも3,000時間

 英語を"本格的に"学ぶとされる10年間の内訳はだいたい次のとおりです。

  • 中学の授業で週に3時間 × 35週 × 3年間 = 約300時間 
  • 高校の授業で週に4時間 × 35週 × 3年間 = 約400時間
  • 大学の授業で週に3時間 × 35週 × 3年間 = 約300時間

これらを合計してみると、1,000時間にしかなりません。

             (中略)

 この1,000時間を10年で割ってみると、驚くことなかれ、1年で100時間、1日に換算するとわずか3分ほどになってしまいます。

 この事実には改めて言われて驚いた。よく「日本人は英語を10年間も勉強してるのに、全然英語ができない」なんてことを言われるが、たしかにこれじゃできるはずがない。

 

音読は最低50回

 英文の音読は昔から効果的な学習法として有名だ。著者もそこは否定しておらず、むしろ英語習得に欠かせない勉強法だと主張している。じゃあ一体何回音読すれば良いのか?結論として、最低でも50回は必要なようだ。

 英語の使い手たち(30人)に聞いてみました。

 「30解から50回程度」と答えた人が全体の90パーセントでした(500回以上と答えた人はひとりもいませんでした)。

日本人英語でかまわない!つうじることが大事!

 インド英語、フィリピ英語、シンガポール英語(Singlish)という言葉があるように英語は「国際共通語」でありながら、いやあるがゆえに、各地域の特徴をもっている言語になってきており、もはや英米人のだけの所有物じゃなくなってきてる。

 

 コミュニケーションのあり方を無視した一方的な発信では意味がないが、一方で多少の語彙力の低さや文法のミス、発音などに囚われすぎる必要はないということだ。

 

英米では「名前」も必ず添えて紹介する

 英米人が名前を言うのは、個人のアイデンティティを尊重してのことです。地位や立場、関係や続柄よりも、名前のほうが重視すべき情報なのです。もし名前を言われなかったら、「人格をないがしろにされたと感じる」(アメリカ人)ようです。

 本書は英語文化やマナーについても触れていて、その中でもこの内容は特に「ほぇ〜」ってなった。

 

 日本だと兄弟でレストランとかを訪れたときに、たまたま友人に会ったりしても「弟です」で済ませてしまう気がするが、英語圏では「弟のケンシロウです」と名前を添えないと失礼になるらしい。

 

 こういう文化に根付く感覚的なところは、いくら参考書の上で勉強してもなかなか身につかないよなぁと。

 

感想

 大学時代の研究室の教授が、英語にとても厳しい先生で、それこそ「L」と「R」の発音や「TH」の音の出し方とかかなり注意された。人生で初めて発音の練習をしたのもの、その時だった。

 

 結果的に教授に怒られないように、というネガティブなモチベのもとやった勉強はほとんど身につかず、わたしは英語からもその教授からも、文字通り逃げてきた。

 

 そのトラウマもあってか、わたしは本書で語られる「ネイティブ英語崇拝』の度合いは結構強かった。そんな凝り固まったわたしの英語へのスタンスを本書はだいぶ柔らかくしてくれたと思う。

 

 結局のところ、ネイティブ的な発音も喋り方も大人になっては手に入らないモノらしい。そこはそういうもんだと割り切って、伝わる英語を身につけることを目指そうよ!という本書のメッセージは、「英語学習のやる気アップのため」というこの本を手にとった目的を十分満たしてくれた。