【書評】『アメリカ最優秀教師が教える 相対論&量子論―はじめて学ぶ二大理論』
BLUE BACKSの『アメリカ最優秀教師が教える 相対論&量子論―はじめて学ぶ二大理論』を読んだので記事にしておく。
アメリカ最優秀教師が教える 相対論&量子論―はじめて学ぶ二大理論 (ブルーバックス)
- 作者: スティーヴン.L・マンリー,スティーヴン・フォーニア,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/21
- メディア: 新書
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本の概要
本書は現代物理学の二大巨頭と言える「相対論」と「量子論」についての入門書だ。
「現代物理学」と聞くとなんとなく難しそうだが、数式はほぼ登場しないため高校生でも十分読める。
本書を読んでほしい人
こんな人にオススメ。
キモいアメリカタッチのキャラによる掛け合いが特徴
本書はアメリカの大学講師の本を日本語訳したものである。なのでアメリカ特有のクセがめちゃくちゃ強い。最も際立つのがアメリカタッチのキャラクターが随所で「相対論」や「量子論」について掛け合いをしている点だ。
このキャラクターがとてもヘンテコで、ヒゲモジャのいかにも科学者っぽいやつはまだいいのだが、なぜかサーファーや仙人が登場する。どういうチョイスか甚だ謎である。しかもお世辞にも絵の感じが可愛くない。著作権の都合上写真は載せられないが、表紙からなんとなく想像がつくと思う。
ただこのキモいキャラたちのおかげで本書はおもしろく、かつ誰にでもわかりやすくなっている。
およそ日常では信じがたい「相対論」と「量子論」の法則に対して、彼らは読者の代わりに首をかしげてくれたり、時には怒ってくれたりする。
例えば有名な「シュレディンガーの猫の実験」について、以下の下りがある。
「シュレディンガーの猫は、「生きた状態」と「死んだ状態」の重ね合わせとなっていて、次のような式で表されることになります。
猫の状態 = 1/2(死んでいる) + 1/2(生きている)
そしてこの文章に対して、パーマ頭の主婦は大変お怒りである。物理の本になぜ主婦が登場するかは触れない。
いいかげんにしてよ!そんなのばかばかしいわ!猫は死んでいるか生きているか、どっちかよ。両方なんてありえないわ。
素晴らしいツッコミである。おっしゃるとおり。ちなみにその後サーファーはこう返している。
おい、そんなのたいしたことないぜ。俺なんか、街で一晩大騒ぎしたあと、次の日はいつも半分死んで半分生きてる状態だよ。それが量子力学のせいだとは全く知らなかったけどな。
ワタシも知らなかったよ。
著者はこんな人
著者のスティーヴン・マンスリーは、執筆当時ロチェスター大学の物理入門コースの講師。2007年には米国物理教師協会から学部課程優秀教師賞を受賞するなど、教育者として高く評価されている人物だ。小学生にスライド・ショーを駆使して物理を教えることもしているらしく、本書がわかりやすいのも納得だ。
さいごに
実はワタシは大学時代は理学系の物理学を専攻していた。当然「相対性理論」も「量子力学」も大学の講義で専門的に学んだのだが、「光は粒子であり波である」とか「電子の振る舞いは確率的にしか議論できない」とか、今までの常識を覆すような内容が当たり前のように淡々と説明される講義に???しかなく、全然ストンと入ってこなかった。
本書のように「そもそも不思議なことなんだよ。やばいよね」というスタンスのもと説明してくれた方が当時もっと感動があったかもしれない。
ワタシのように大学時代に触れたことがある人でも、ざっとエッセンスを振り返るためには丁度よい分量の本だ。気になる方はぜひ読んでみてほしい。